慶應義塾大医学医学部

サントリーグローバルイノベーションセンター

テーマ4

1日に必要な水の量を知る 日本人の水分摂取量

日本人(年齢、性、地域差)の水分摂取の特徴把握

人間にとって水が重要であるのは、体のおおよそ3分の2が水から出来ているからではなく、水が体の隅々まで、そして、細胞の一つひとつにまでに行き渡り、流れているからだと私たちは考えています。そしてまた、こうした体内の水の流れの良し悪しが人の健康状態を大きく左右しているのではないかとも考えています。
ここでは、こうした仮説を検証するひとつの切り口として日本人の水分摂取量の調査を行います。ネットを通して、多くの一般の方々がどのような飲み物や食べ物をどれくらい摂られているかを調査し、それらを全て水分量に換算することで水分摂取に関する基礎データとして蓄積します。さらに、被験者の水分摂取量を管理した介入試験を行い、その結果からの医学的な見地と合わせて、水の適正な摂取量に迫っていきます。

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研究概要

日本人を対象にした水分摂取調査を行うとともに、介入試験を通した医学的見地と合わせて、年齢、性、地域差をふまえた水の適正な摂取量を明らかにする。

研究の背景・目的

体内に取り込む水は、飲み物および食べ物から摂取する水と代謝水に分かれる。一方、体外に排出する水は、尿や糞便を通じて行われるだけでなく、汗となって皮膚から蒸発する水分、また吐く息にも水分は含まれる。体内に取り込む水と、排出する水の量は釣り合っているため、体内の水は常に一定に保たれている。

体内に取り込む水の必要量については年齢、性、地域によっても異なってくるが、それらを算出するための根拠はいまだに整っていない。アメリカやカナダ、ヨーロッパ諸国では、水の必要量を「目安量」として設定している。

  • 目安量(adequate intake: AI):推定平均必要量及び推奨量を算定するのに十分な科学的根拠が得られない場合に、特定の集団の人々がある一定の栄養状態を維持するのに十分な量

図.日本人の食事摂取基準について(2009.5)厚労省
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2009/05/h0529-1.html

しかしながら、日本においてはこれまでに飲み物および食べ物からの水分摂取量を調べた研究は公表されておらず、「目安量」は設定されていない。また、水分摂取量は、その国の気候や食生活大きく影響を受けることから、アメリカやヨーロッパ諸国の「目安量」を用いることは難しい。
特に、米を主食とした日本人の食事は、パンを主食とした欧米人の食事に比べて、食事から摂取する水分量が多いと推測される。したがって、飲み物および食べ物から摂取する水分量については日本独自の算出法を見出す必要がある。

飲み物および食べ物から摂取する水分量を調べるためには、まず摂取した全てのものを抜けもれなく記録する手法の開発、さらに摂取した全てのものにおける水分量を正確に算出する手法についても開発の検討を要する。そして、摂取した全てのものにおける栄養素が代謝されて生じる水、すなわち代謝水についても算出できるような新たなシステムの構築が必要となってくる。

摂取水分量

本テーマでは、このような水分摂取量を正確に算出できるシステムを構築し、その手法を用いて日本人を対象に大規模調査を行うことによって、年齢、性、地域差をふまえた水の適正な摂取量を明らかにするための研究を進めている。

計画

  • 1年目

    水分摂取調査に向けて調査方法を検討するとともに、
    飲みもの、食べものから摂取した水分量を算出する手法を確立させる

  • 2年目

    日本人を対象とした水分摂取調査を実施する。
    また、介入試験によって適正な水分摂取量の推定のための調査をおこなう

  • 3年目

    水分摂取調査および介入試験の結果より、科学的根拠に基づいた適正な水分摂取量を算出する

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